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館長だより

ミモザのリース(館長だより⑦)『母の信念』2018.12

『母の信念』

   7年前に86歳で亡くなった母は、師範学校を出て結婚するまでは教師をしていたそうです。しかし私の知る母は、父の収入内で家計をやりくりする専業主婦。家事全般どこにも手抜きはなかったように思います。
   ただ、私や姉に家事を手伝わせることも教えることもしませんでした。「家事はいずれ、いやと言うほどしなければならなくなる。だから今は勉強。手に職を付けることを考えなさい」。そう小学校時代から言われて育ちました。
   その教えもあり、また、父が40代の若さで病死し、その後の経済的な不安定さも経験した私たち姉妹は、出産後も働き続けられる仕事に就き、母はそのサポートをしてくれました。
   大人になって、母の人生の全容を知るようになり、「手に職を付けろ」と言い続けた背景も分かるようになりました。自分自身が望む人生の選択をするには、経済的自立が必須。そのためには、自分に向く仕事に就くことが大事。それが母の信念となっていたのでした。
   亡くなる3年ほど前だったでしょうか。母の介護内容について打ち合わせしていたケアマネジャーさんに、突然母は「あなたの仕事に就くにはどうすればいいの?」と聞きました。丁寧に答えてくれたケアマネさんが帰った後、母は私に言いました。「あなたにあの仕事は向いているよ。試験を受けてみたら?」
   向く仕事に就く。それによって自立する。心身が衰えた母に、その信念は生きていました。もしかしたらその時、母の中で、私はまだ高校生だったのかもしれません。

はあもにい館長 坂本ミオ