館長挨拶

館長挨拶

吉田 稀世 館長

2024年は能登半島で起こった大きな地震の衝撃で始まりました。
震災で命を落とされた方のご冥福をお祈りし、被害に遭われた方の心休まる日が一日も早く訪れることを祈りつつ熊本地震を経験した私たちは、地震からの復興期にある熊本で、今、地震の経験を生かしてどのくらい社会を前に進めることができているのかを考える日々が続いています。

阪神淡路の震災後から「男女共同参画の視点の防災」というキーワードが、防災・減災の取り組みの中で使われ始めました。非常時には、暴力・人口流出・人手不足・少子化・格差・孤立孤独などさまざまな社会課題が顕在化します。これらの課題はコロナ禍でさらに明確になりました。原因のすべてがジェンダー不平等にあるとは言いませんが、大きく深く関係していることは自明です。
当センターでも2017年から「男女共同参画の視点での防災・出前講座」を実施しながら、日常にあるジェンダー格差がもたらす被害・厄災を伝え、私たちひとりひとり何ができるのかを考える機会を持ち続けています。
〈男女共同参画〉には関心がなくても〈防災〉をきっかけにジェンダーの課題を知り、触れていただきたい。男女共同参画社会は、男女共同参画は関係ない(と思っている)人たちとこそ一緒に考える必要があると思うからです。

複雑化する社会課題を解決するための手段として、NPOや企業、行政など異なる強みを持つ団体が組織を越えて連携し課題解決に取り組むコレクティブ・インパクトが言われ始めて10年以上が経ちます。そして現在までに、コレクティブ・インパクトの実践を通してダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包括・包摂)、エクイティ(公平性)などのキーワードがポピュラーになり、現在は、解消すべき社会課題の基礎は〈構造的不平等〉であるという視点が注目されています。
構造的不平等は、男女/人種/貧富/障害などが原因で生じる不平等は社会構造にあるという考え方ですが、ややもすると「社会が悪くて、自分は悪くない」考え方だと思われがちなところがあります。では、「社会」とは何でしょう?
昨年度、センターと市民団体との協働で実施した「DV防止セミナー」で、上野千鶴子さんと信田さよ子さんに講演をいただきましたが、その際、上野さんが「こんな社会に誰がした? それは私たちですよ。」だからこそ、社会に関心を持ち・知り・関わりを持ってほしいと力強くおっしゃっていました。
私たちは、小さくても「社会」を構成する一部です。社会に、変化というインパクトを創出するためには、内側(私たち)の価値観を変革していくことも必要です。そして、価値観の変革は様々な経験や自分とは異なる人との対話と関わりの中で生まれるものだと思います。

センターには、男女共同参画に関心がある人ばかりでなく、ホールイベントや会議などそれぞれの活動のために様々な方が来館されます。これまでも、来館の方に少しでも「男女共同参画」に触れていただけるよう地道な周知・啓発活動に取り組んできましたが、今年度は、さらに多くの方に「はあもにい」を知っていただく機会、足を運んでいただける機会を作り、積極的に他機関・他団体との連携にも力を入れてまいります。そして、新たな人との出会いや経験が、ひとりひとりの変化や気づきのきっかけになるよう、働きかけを続けていきたいと思います。
今年度もどうぞよろしくお願いします。

2024年4月

館長 吉田稀世

「ミモザ」がシンボルツリーです

3月8日は「国際女性デー」。世界各国で女性の社会参画の機会拡充や人権を守るためのイベントが行われます。イタリアではこの日、男性が女性に感謝を込めてミモザの花を贈る「ミモザの日」として親しまれているそうです。

そこで「はあもにい」は、ミモザをシンボルツリーにしています。春の訪れを告げるかのように可憐な黄色い花が風に揺れるさまは、気持ちをホッとさせるとともに、何か楽しいことが始まる予感がしませんか?